
(「女は派遣を望んでいる? NO!」。国会近くでのぼりを立て、抗議する「オンナ・ハケンの乱」。派遣切りにあった女性らが、「派遣法を修理しろ〜」と替え歌でアピールした=11月29日、東京・永田町、仙波理撮影【12月9日 朝日】)
【「男を逮捕してと政府に請願したけれど、捕らえられたのは私だった」】
世界各国において、女性の基本的人権及び社会的地位が著しく侵害されている現実が今も続いていることは、今更言うまでもないところで、このブログでもそうした話題をしばしば取り上げてきました。
内戦などで社会が混乱・崩壊すれば、女性に限らず生命の維持すら容易ではない状況となり、女性の場合は性的暴行の対象ともなります。
内戦で荒廃したコンゴ民主共和国(旧ザイール)では、"毎日1100人以上"の女性たちがレイプ被害に遭っているとする調査結果もあります。【6月25日ブログ「コンゴ 後を絶たない"集団レイプ"事件 毎日1100人以上の女性たちがレイプ被害」(
そうした極端な事例ではなくとも、多くの社会で、欧米や日本の常識では理解できないようなことが普段に起きています。最近目にしたアフガニスタンとバングラデシュの話題です。
****強姦された女性「加害者と結婚するしかない」、アフガン****
アフガニスタンのグルナスさんは、親類の男に性的暴行を受けて姦通罪で有罪となった後、赦免され釈放された。だがグルナスさんは、兄弟から殺害の脅しを受けており、自分に性的暴行を加えた男と結婚せざるをえなくなっている。
自分の正確な年齢を知らず、20〜21歳くらいだというグルナスさんは、青いブルカ(イスラム教徒の女性の顔や体を覆う衣装)を身につけて、静かな口調でAFPの取材に応じた。取材中、グルナスさんの足もとの床では、加害者との間に生まれた娘が遊んでいた。
「私は、彼と結婚しなければならない。子どもの父親が必要です。娘の世話をして、私たちに住むところを与えてくれる人が必要です」と、グルナスさんは語った。
「住むところがありません。私の兄弟たちは、私と私を襲った男と娘を殺すと誓いをたてました」
神様、あなたは私が知って何をしたいですか?
■性的暴行受け、「道徳上の罪」で有罪に
グルナスさんはいとこの夫に性的暴行を受け、「道徳上の罪」をおかした罪で2年間服役し、13日に釈放された。アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領が1日、国際社会からの批判を受けてグルナスさんの赦免を決定したが、実際の釈放までにはそれからさらに2週間がかかった。
グルナスさんは現在、超保守的なアフガニスタン社会で、娘と自分の安全を確保し、家族の名誉を取り戻すために、自分を襲った男と結婚することを余儀なくされている。
グルナスさんを支援する活動家らは、アフガニスタンにありふれているこういった迫害を「(旧支配勢力の)タリバン時代の遺物」と呼び、アフガニスタンの民主化を目指して行われた米軍主導の進攻から10年が過ぎても続く、女性の権利の低さを訴えている。
グルナスさんは、警察に性的暴行を受けたことを申し立て、拘束された。
「男を逮捕してと政府に請願したけれど、捕らえられたのは私だった。私は無実なのにどうして拘束されたの?」と、グルナスさんは語る。
■「加害者と結婚」が唯一の選択肢か
グルナスさんはカブールの刑務所内で赤ちゃんを育てた。釈放後の今も、身の危険をおそれ、非公開の場所にある女性用の避難施設の中での生活を強いられている。
グルナスさんの弁護士を務める米国人のキンバリー・モトリー氏は、「(グルナスさんは)自分自身と娘を守るための最善の方策を模索している」と語る。だが、加害者の男は5年先まで服役中の見通しで、男と結婚して先に進むことも難しい。
「不幸なことに、女性が暴行された被害者だったとしても、自分を襲った男を受け入れて結婚することが、女性が自分の身を守るための最善の方策であると考える文化がある」と、モトリー氏は語る。「残念ながら、このようなタリバン時代の遺物が今もなおアフガニスタン文化に影響力を持っているのだ」
国際NGOオックスファムが10月に発表した報告書によると、アフガニスタン女性の87%が、肉体的・精神的・性的暴力または強制結婚の被害に遭っている。
モトリー氏は、赦免を決定したことで、カルザイ大統領や検察当局は、性的暴行の被害者の女性たちを起訴するべきでないと認識したことになると指摘する。
どれくらい長い間、あなたは結婚前に一緒に住むべきですか?
■「娘を学校に通わせたい」
グルナスさんは、自分の事件に関心が寄せられたことに感謝しているという。多くの女性はそのような幸運に恵まれない。
「私は恐れていません。彼は私を受け入れました。私も彼を受け入れました」と、グルナスさんは語る。
「娘を学校に通わせたい。彼女に医師になってほしい」【12月20日 AFP】
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若干補足すると、加害者との結婚は釈放の条件としてつけられたものです。
"グルナスさんの釈放を求める請願が5000人以上から寄せられたことを受けてカルザイ大統領が会議を開き、その席で司法当局者によって赦免の決定が下されたという。ただし、そのまま釈放すると超保守的なアフガン社会では密通者の烙印を押されてしまう恐れがあるとして、加害者との結婚を条件に付けた。
グルナスさんは、自分の兄弟が加害者の姉妹と結婚することを条件に、これに同意したという。報道官は、自分が強姦されたわけではないとの保証を得たかったのだろうと述べた。" 【12月2日 AFP】
暴行被害者が逮捕されてしまうこと、加害者との結婚が釈放の条件となることなど、よく理解できない話です。
"タリバン時代の遺物"とありますが、女性の権利・活動を著しく制約したタリバンによるものだけでなく、アフガニスタン社会に以前から存在する女性軽視・男性優位の考え方の表れのようにも思えます。
アフガニスタンでは2年前に女性を暴力から守る法律が施行されましたが、国連は、加害者が起訴された例は100件ほどに過ぎないと非難しています。
****求婚を拒んで硫酸をかけられる****
先月27日には、武装組織の元司令官からの求婚を拒んだ17歳の少女が硫酸を浴びせられるという事件も発生している。マスクをかぶった武装集団が深夜、北部クンドゥズ州の少女の自宅に押し入り、少女と姉妹と母親に暴力を振るったのち、少女の顔に硫酸を浴びせたという。少女は重傷で、4人の姉妹と母親もやけどを負った。
内務省によると、ビスメッラ・モハマディ内相が警察に、事件の捜査と犯人の逮捕をじきじきに命じたという。【12月2日 AFP】
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製品は、我々は家族で教会以上である
【「右手は切られたけれど、まだ左手が残っている」】
バングラデシュの事件は、おぞましいものがあります。
****大学での学位目指した妻の指を夫が切断、バングラデシュ****
バングラデシュ警察は15日、大学の学位取得のために無断で勉強を始めた妻に腹を立て、妻の指を切断した容疑で、男を逮捕したと発表した。永続的な障害を負わせた容疑で送検する考えだという。
警察当局のモハマド・サラウディン署長によると、アラブ首長国連邦(UAE)で出稼ぎ労働者として働いていたラフィクル・イスラム容疑者(30)は、バングラデシュに帰国して数時間後に、妻のハワ・アクテルさん(21)を縛り付け、口をテープでふさいでから、右手の指5本を切断した容疑が持たれている。
「容疑者は8年間の基礎教育しか受けていなかったが、妻は高等教育を受けるために大学に通っていたため、激昂して犯行に及んだ」と、サラウディン署長はAFPに語った。
イスラム容疑者は、ダッカで逮捕され、容疑を認めているという。警察当局は捜査を終え、イスラム容疑者を送検する準備を進めている。永続的な障害を負わせた罪で起訴されて有罪となれば、最高で終身刑が言い渡される可能性がある。
妻のアクテルさんは、治療を受けて実家に戻っている。アクテルさんは、同国英字紙デーリー・スターに対し、「右手は切られたけれど、まだ左手が残っている」と語り、大学教育を修了したいとの考えを述べた。
イスラム教徒が国民の大半を占めるバングラデシュでは、教育を受けた女性に対する恐ろしい家庭内暴力(DV)事件が次々に発生している。
6月には、無職の夫が、名門ダッカ大学助教授の妻がカナダの大学でさらに高い教育を受けようとしたことが許せず、妻の両目をくりぬくという事件があった。【12月18日 AFP】
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個々の事件の背景には、第三者の窺い知れない事情も多々あると思います。
妻が大学通っていることを、海外出稼ぎ中の夫は知らされていたのか・・・とか、よくわからない部分もあります。
一般論で言えば、男性優位の考え方を疑うことなく受け入れている男性は、多くの場合、自分自身は高い教育を受けておらず、自分の所有物のように見なしていた妻が教育を受けて世界を広げることを、自分の優位性を脅かすものとして嫌い、暴力でその根拠なき優位性を確認しようとすることが多くあります。
今回事件もそうした事例のひとつではないでしょうか。
アフガニスタンで学校に通う女性が、タリバン支持者から酸を浴びせられる・・・といった事例も同様でしょう。
アフガニスタンにしてもバングラデシュにしてもイスラム社会です。
イスラム社会の女性に対する考え方は一様ではなく、その教義の本質とどのように関わるのかは難しい問題でしょうが、どうしても欧米・日本の常識・価値観と相いれない事例が起きやすいことも事実です。
多くの女性はそうした社会的制約を当然のこととして受け入れ、幸せを築いているのでしょうが、従来からの制約に収まらない女性に対しても寛容さを示してほしいものです。
【「孤族の国 女たち」】
毎回言うように、私自身は日本の男性優位社会にどっぷりつかっており、女性の地位・権利について特別の考えも持っていませんが、そんな私でも世界の事例を見聞きすると、いろいろ考えてしまいます。
日本の女性に関する記事では、【朝日】の「孤族の国 女たち」が気になりました。
****単身女性、3人に1人が貧困 母子世帯は57%****
勤労世代(20〜64歳)の単身で暮らす女性の3人に1人が「貧困」であることが、国立社会保障・人口問題研究所の分析でわかった。2030年には生涯未婚で過ごす女性が5人に1人になると見込まれ、貧困女性の増加に対応した安全網の整備が急がれる。(後略)【12月9日 朝日】
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